Old Timer雑への投稿記事③

《Old Timer 167号掲載原稿》 2019年6月26日発行

【4JエンジンとJH4エンジン搭載車両の外観相違点について】

これまで2回にわたり、情報が少なく状況がよく分からない三菱ジープの黎明期を、その当時の2つのエンジン、『ウイリス製4Jエンジン』と『三菱製JH4エンジン』の観点から考察を致しました。今回は、その2つのエンジンを搭載した三菱ジープCJ3B-J3の外観にどのような違いがあったのかについてご説明したいと思います。
『三菱ジープのあゆみ』の169ページにCJ3B-J3の4面図が掲載されています。図面が発行されたのは、昭和28年(1953年)4月16日。このCJ3B-J3は、左ハンドルでスペアタイヤは助手席側のサイドに設定されています。グリル正面には、三菱マークのないWILLYS。ボンネット運転席側にもWILLYSのマーク。リアゲートにもWILLYSのマークと有名な『4 Wheel Drive』のステンシルもあります。後席は、のちに4JエンジンからJH4エンジンに切り替えられたCJ3B-J3と違い前向きリアシートとなっています。CKD部品を輸入して組み立てが開始された当初は、陸運事務所の方々も前向きリアシートが装着されているので、乗用車か商用車かで課税判断に苦労されたようです。前回ご説明したように例の新三菱重工業時代の整備解説書の中に、CJ3B-J3車両には4JエンジンとJH4エンジン両方の設定があったことが明記されています。ただ私は、特にこの前向きリアシートのある4面図のCJ3B-J3車両に4Jエンジンが搭載されていたと考えています。もう少し期間を絞ると、昭和29年(1954年)12月のJH4エンジンの完全国産化が達成され、昭和30年(1955年)5月のCJ3B-J3国産化第一号車が完成するまでの間は、この4面図の前向きリアシートのCJ3B-J3が生産されていたものと考えています。残念ながら、この前向きリアシートが装着されたCJ3B-J3の当時のカタログは目にしたことがありません。

 

私の手元にある1955年のCJ3B-J3 70HPのカタログでは、ボンネット運転席側及び助手席側には、MITSUBISHIマークがあり、スペアタイヤは車両の背面に設定されています。後席は、現在の三菱ジープと同様の対面シートとなっています。そして、方向指示器は前向きリアシートのCJ3B-J3も対面シートのCJ3B-J3もあの愛らしいアポロウインカーです。また両車両ともフロントドアはロイド面積が自衛隊車両のように足元まで大きく取られています。また、両車両ともフロントグリルに通称おっぱいマーカーが設定されています。
全長は、対面シートのCJ3B-J3がスペアタイヤを助手席サイドから背面に変更したため違いがあるのは理解できますが、これ以外のほぼ全ての車両寸法が1955年のカタログとこの4面図のものとで微妙に異なっています。

2019年04月09日