活動報告

Old Timer誌への投稿記事①

《Old Timer 165号掲載 三菱ジープ黎明期の情報》 2019年2月26日発行

【三菱ジープ黎明期のエンジンについて】

 実は、書籍『三菱ジープの歩み』にも3J,4Jエンジンのことにはズバリには触れられてはいないんです。同書のP153に以下のような記述があります。この『三菱ジープの歩み』という非売品書籍は、ヤフーオークションに定期的に出品されています。原本はグリーンの表紙ですが、コピー版は薄いブルーの表紙になっています。新しく三菱ジープを所有されるようになった方は、是非この書籍をお読みいただきますとかなり三菱ジープに対する理解が深まると思います。
 一説のくだりにはこのような記載があります。
『JH4ハリケーンエンジンは、CJ3B型以降のジープに搭載されたF頭式シリンダーヘッドのエンジンであり、これ以前のCJ2A/3A(J1,J2型)には、サイドバルブ式のライトニングエンジン4型が搭載されていた』『しかし、ハリケーンエンジンといえど、シリンダーヘッドを除けば、ベースはほとんどライトニングエンジンと同じである。1953年にウイリスオーバーランド社と技術契約を結びジープの完全国産化に着手したが、最初のJ1,J2型はCKD(完全部品供給方式)のため、ライトニングエンジンであった。』
 この答えは、新三菱重工業時代(1952年5月~1964年6月)の整備解説書の中にありました。3Jエンジンと4Jエンジンは、ウイリスオーバーランド社製のもので、3JエンジンはL頭式で、4JエンジンはJH4同様にF頭式燃焼室が設定されていました。ボア・ストロークは3エンジンとも同じで、排気量も2199㏄。但しエンジン回りを含めた寸法や整備重量には大きな違いがありました。

2019年04月07日

Old Timer誌への投稿記事②

《Old Timer 166号掲載 型式認定届出資料》 2019年4月26日発行

【第一次車種拡大期】

 CJ3B-J3のご先祖はCJ3B-J1(官庁用)とCJ3A-J2(軍用)で全ての部品を米国から輸入したCKD(complete knock down)で立ち上がりました。この頃のウイリス製の4Jエンジンを搭載したCJ3B-J3に関する諸元表が存在しています。外国自動車という扱いで型式認定がされた形跡が残っています。また、詳細まではお伝えできませんが、昭和29年(1955年)6月19日付けで運輸省から認可がおりたようです。馬力は、その後の初期のJH4エンジンと同じ70HPと記載されています。製造者は、新三菱重工業株式会社名古屋製作所となっています。残念ながら、私はJH4エンジン搭載の初期型CJ3B-J3 70HPの諸元表やカタログは持ち合わせていません。JH4エンジンの馬力が76HPに強化された後期型へは、昭和36年(1961年)8月頃から切り替わったようで、この頃のカタログは所有しており、手書きの車両画像が中心のものですが非常に参考になります。
 時期は前後しますが、昭和33年(1958年)5月8日には、KE31ディーゼルエンジンを搭載したCJ3B-JC3が型式認定され、その後、昭和36年(1961年)8月にJ3(通称J3R右ハンドルガソリン)が、またほぼ同じタイミングでJ3D(通称J3RD右ハンドルディーゼル)がラインアップされました。この頃の取扱い説明書には、CJ3B-JC3(左ハンドルディーゼル)、J3(左ハンドルガソリン)、J3R(右ハンドルガソリン)、J3RD(右ハンドルディーゼル)が同時に記載されており、4車種の諸元を一度に比較できる優れものとなっています。※CJ3B-J1,J2という表現は、敢えて故石川先生流を踏襲しています。

2019年04月08日

Old Timer雑への投稿記事③

《Old Timer 167号掲載原稿》 2019年6月26日発行

【4JエンジンとJH4エンジン搭載車両の外観相違点について】

これまで2回にわたり、情報が少なく状況がよく分からない三菱ジープの黎明期を、その当時の2つのエンジン、『ウイリス製4Jエンジン』と『三菱製JH4エンジン』の観点から考察を致しました。今回は、その2つのエンジンを搭載した三菱ジープCJ3B-J3の外観にどのような違いがあったのかについてご説明したいと思います。
『三菱ジープのあゆみ』の169ページにCJ3B-J3の4面図が掲載されています。図面が発行されたのは、昭和28年(1953年)4月16日。このCJ3B-J3は、左ハンドルでスペアタイヤは助手席側のサイドに設定されています。グリル正面には、三菱マークのないWILLYS。ボンネット運転席側にもWILLYSのマーク。リアゲートにもWILLYSのマークと有名な『4 Wheel Drive』のステンシルもあります。後席は、のちに4JエンジンからJH4エンジンに切り替えられたCJ3B-J3と違い前向きリアシートとなっています。CKD部品を輸入して組み立てが開始された当初は、陸運事務所の方々も前向きリアシートが装着されているので、乗用車か商用車かで課税判断に苦労されたようです。前回ご説明したように例の新三菱重工業時代の整備解説書の中に、CJ3B-J3車両には4JエンジンとJH4エンジン両方の設定があったことが明記されています。ただ私は、特にこの前向きリアシートのある4面図のCJ3B-J3車両に4Jエンジンが搭載されていたと考えています。もう少し期間を絞ると、昭和29年(1954年)12月のJH4エンジンの完全国産化が達成され、昭和30年(1955年)5月のCJ3B-J3国産化第一号車が完成するまでの間は、この4面図の前向きリアシートのCJ3B-J3が生産されていたものと考えています。残念ながら、この前向きリアシートが装着されたCJ3B-J3の当時のカタログは目にしたことがありません。

 

私の手元にある1955年のCJ3B-J3 70HPのカタログでは、ボンネット運転席側及び助手席側には、MITSUBISHIマークがあり、スペアタイヤは車両の背面に設定されています。後席は、現在の三菱ジープと同様の対面シートとなっています。そして、方向指示器は前向きリアシートのCJ3B-J3も対面シートのCJ3B-J3もあの愛らしいアポロウインカーです。また両車両ともフロントドアはロイド面積が自衛隊車両のように足元まで大きく取られています。また、両車両ともフロントグリルに通称おっぱいマーカーが設定されています。
全長は、対面シートのCJ3B-J3がスペアタイヤを助手席サイドから背面に変更したため違いがあるのは理解できますが、これ以外のほぼ全ての車両寸法が1955年のカタログとこの4面図のものとで微妙に異なっています。

2019年04月09日

Old Timer誌への投稿④

《Old Timer 168号投稿原稿》 2019年8月26日発行

《4JエンジンとJH4エンジン搭載のCJ3B-J3の諸元表の比較》
前回3回目は、三菱ジープ黎明期のCJ3B-J3に搭載されたエンジン(4Jエンジンor JH4エンジン)別の外観比較を行いました。CJ3B-J3には、米国ウイルス社製の4Jエンジン70HP搭載車と日本製JH4エンジン70HPが搭載されたものが存在していました。私の分析では、黎明期にあたる1953年当時は、軍用車であるCJ3B-J4という車両がメインに生産され、前回説明した前向きリアシートと4Jエンジンが搭載されたCJ3B-J3※は翌年の1954年に生産が終了し、1955年以降は絵画風で有名なカタログに掲載されているように、後席対面シートとJH4エンジンの組み合わせの仕様で生産されたと考えられます。また、もしかすると1955年頃まではCJ3B-J3そのものの台数がうんと少なかったのかも知れません。
※1953年から1954年にかけて生産されたCJ3B-J3 はWILLYSマーキング、スペアタイヤの助手席側リア右への装着、そして案外見落とされがちですが、リアシートが前向きとなっていました。この4Jエンジンを搭載した前向きリアシート仕様のCJ3B-J3の総生産台数は僅か120台程度であったようです。しかも外国自動車として専用の型式認定を受けていたようです。可能性としては、米軍関係者向けであったのかも知れません。


今回は、三菱ジープ黎明期に米国ウイルス社製のコンポーネントをもとに生産されたCJ3B-J3、そして順次国産化を進めJH4エンジン等日本製コンポーネントを主に生産されたCJ3B-J3の諸元を比較してみたいと思います。まず、主要コンポーネントの供給メーカーを比べてみます。今では聞きなれた日本企業の名前があがっています。興味深い内容です。

4Jエンジン車           JH4エンジン車

① 原動機:4J型ウイリスモータース(米国)  JH4型 新三菱重工京都製作所
② 点火コイル:CR6009オートライト(米国)  J-649712 三菱電機
③ 配電器:IAD4008Aオートライト(米国)  J-808365 三菱電機
④ 点火プラグ:J-8 チャンピオン(米国)   B42 日本特殊陶業
⑤ 気化器:YE983S カーターキャブ(米国)  YF(J-806305) 愛三工業
⑥ 空気清浄器:オイルバス ドナルドソン(米国) オイルバス 東京濾過器
⑦ 燃料ポンプ:5594032 AC(米国)     AJ-809338 愛三工業
⑧ 充電発電機:GDJ-4808S オートライト(米国)  JM-60089 三菱電機
⑨ 始動電動機:MCH6007 オートライト(米国)   J-808399 三菱電機

次にエンジン諸元の比較結果は以下のようになります。
《4Jエンジン70HP、JH4 70HP共通の20項目》

① 種類    ガソリン機関  ⑪最高平均有効圧力 8.6kg/cm2/2000rpm
② 冷却方式  水冷式     ⑫ピストン形式  楕円型Tスロット入
③ シリンダー数・配列 4直列 ⑬吸気弁開時期      9°(上死点後)
④ サイクル      4   ⑭吸気弁閉時期     50°(下死点後)
⑤ 燃焼室型式     F頭式 ⑮排気弁開時期     47°(下死点前)
⑥ シリンダーヘッド型式 分離式 ⑯排気弁閉時期     12°(上死点前)
⑦ 内径x行程㎜ 79.4x111.1   ⑰弁隙間 吸 0.46mm
⑧ 総排気量cc 2199      ⑱弁隙間 排 0.41mm
⑨ 最高爆発圧力 4.7kg/cm2/2000rpm ⑲最大トルク 15.0kgm/2000rpm
⑩ 圧縮比 6.9:1     ⑳最大出力 70HP/4000rpm

《4Jエンジン70HP、JH4 70HPの相違3項目》こちらはあまり多くはありません。
4Jエンジン車      JH4エンジン車
① 点火時期 5°/o rpm 5°/600 rpm
② 燃料タンク 45.5L 48.0L
③ ピストン材質 ローエキス    SAE332  

 

《Old Timer169号投稿原稿》 2019年10月26日発行

三菱ジープ純正幌の研究

今回からは、過去に誰も詳しく触れたことのない三菱ジープ純正幌の仕様について、私の思うところをお伝えしたいと思います。幌を構成する幌本体と幌骨、実に奥の深い研究テーマです。以下の説明内容はJ50系に関するものとなります。いわゆるショートホイールベース車両が対象となります。
《はじめに》
三菱ジープの純正幌については、分かっているようでわからない事が実に多いと思います。純正幌の変遷を大きく捉えると、黎明期の箱型リア別体式、ナロー時代のリア別体式、ワイド時代のリア別体式とワイド時代のリア一体式に区別されます。ナロー時代も初期は、フロント固定部分はレール式で、その後ひねりタイプに切り替わり、ひねりタイプもワイド化で設置間隔が微妙に変更されています。調べれば調べるほど新事実が明らかになりますので、私のライフワークになりそうです。まずは、三菱ジープの表記で良く使われるワードについておさらいをしておきます。私の夢は、いつの日か純正幌に代わる三菱ジープ互助会オリジナルの既製品幌を世の中に送り出すことです。そのために地道に研究を進めております。

《ナローとワイドという意味について》
 これは車幅が幅広かそうでないかではなく、トレッドが拡大された車両かそうでないかを意味する物です。決してややこしくはありません。せっかくの機会ですので正しく理解しましょう。

トレッド:ワイド1300㎜、ナロー1235㎜。 +65㎜
 車幅  :ワイド1665㎜、ナロー1665㎜  ±0㎜
 全長  :ワイド3490㎜、ナロー3390㎜  +100㎜

《リア一体式幌と別体式幌について》
 簡単に申し上げるとリアサイドとリアリアの部分が脱着式かそうでないかということを意味します。J4時代から軍用車両には脱着式が採用されています。ただ、幌を製作する職人さんから見ると、縫製製作行程が一体式に比べ2倍近くとなる反面、長期使用に伴う幌生地の縮による取り付け位置のずれや狂いが発生しやすくなります。私のお勧めは一体式です。

それでは、具体的な幌の形態と幌骨の形状を見ていきたいと思います。各時代のパーツリストから部品図を引用致します。

 

【黎明期のJ3、J3R,J52世代】1955年頃のナロー世代の先駆けです。

《フロントレール固定式箱形幌骨リア別体式幌》
この構造は、米国製CJ3Bとほぼ同じ仕様になっています。フロントレール式というのは、幌の先端部をウインドーの上部にあるレールに沿わせて装着し固定する方式を意味します。ナロー時代の途中でフロントレール式からひねり固定式に仕様変更がなされています。

 

【J58等その後のナロー世代】1976年末頃までの車両をナローと称します。

《フロントひねり固定式リア別体式幌》このひねりというのは、レール式に代わって幌を固定するために採用されたものです。もともとリアカーテンやサイドカーテンもこのひねりで固定され脱着する仕組みになっています。まさに受け側にひねって差し込んで固定する優れものです。フロントウインドー上部に8個設定されています。この頃の幌は、リアとサイドはベルト固定式になります。この固定方法は、黎明期のJ3やJ4軍用車両と同じものになります。

《ひねりの画像》

 

【J59以降のワイド世代】1977年1月以降の車両をワイドと称します。

《フロントひねり固定式リア一体式幌》こちらが最終号機のJ55まで採用されたホック固定式の幌になります。ベルト式に比べて、一番の問題は、幌生地のちじみによってホックが留まらなくなってしまうことが多い点です。純正幌のオーナーさんはみなさんご苦労されています。

 

《Old Timer VOL170投稿原稿》 2019年12月26日発行

 三菱ジープ純正幌の研究②

前回は、ざっくりと純正幌の変遷をナロー世代からワイド世代へどのように変わっていったかを捉えました。今回は、分かりそうで実は全く分からないフロントドアに的を絞って検証をしてみたいと思います。
とその前に、素朴な疑問。ナローとワイドでフロントドアの互換性はあるのでしょうか?結論から申し上げると『互換性はありません』。ナロー(上)とワイド(下)のドアを重ねた画像をご参照下さい。縦方向の長さが異なります。

 

ドアの形状(窓の大きさや筋交いの方向)も年代で様々な変化をしております。残念ながらメーカーの公式な資料がないため、各年代のカタログを分析して独自に纏めてみたものが以下になります。皆さんが普段良く目にしているドアは1981年1月以降の水平窓で筋交いが水平になったタイプとなります。私も1981年以降の車両向けに絞っての三菱ジープ互助会がプロデュースする幌の製作を目指しています。

 

次に具体的なドアの形状をその当時の部品図から見ていくことにしましょう。
新しいものから過去に遡って確認をしてみましょう。その方がイメージし易いと思います。
《水平窓+水平筋交いタイプ》

1981年以降の車両向けでこの頃のドアは鍵付きとなります。YKK製のファスナーが追加され、運転席も助手席も窓が開けられるように
なりました。

   

《右下がり窓+斜め筋交いタイプ》 

1979年から1980年頃の車両向けで意外と早く取りやめとなりました。まだドアハンドルには鍵は設定されていません。


《水平窓+斜め筋交いタイプ》 

1961年頃から1978年頃まで長く採用されたタイプです。ファスナーの設定がなく、開けることができない窓になります。

 

ご参考までですが、J54A等の軍用車にはこのようなドアが設定されていました。
もちろんファスナーは装着されていません。

 

≪Old Timer VOL171投稿原稿≫ 2020年2月26日発行

 三菱ジープの部品について
《パート1 部品番号》
 三菱ジープがこの世に誕生し、初号機である54台のCJ3A-J1が当時林野庁に納入されたのが1953年(昭和28年)2月。それから67年が経過。私にはJ1世代の部品番号は分かりませんが、同年8月から生産が開始されたCJ3B-J3は、私の大先輩を含め今も実際に所有されている方が数多くおられます。つまり実際の車両が確認できるということです。とても素晴らしいことです。
それでは話題を車両のパーツリストに移します。私が所有する最古のパーツリストは1968年(昭和43年)9月に発行されたもので、こちらも既に発行から52年が経過しています。当時のパーツリストに含まれている車種は、J3R,J3RD,J3,JC3というJ3世代の車両となります。これら車種の表す意味は、Old Timer VOL166でご紹介致しました。
この頃の部品番号はアルファベットのA,J,JA,JM等と数字の組み合わせの7桁体系となっていました。現在は、MAやMBとの組み合わせで8桁の部品番号体系となっています。この桁数対応は、それだけ生産する車種(主に乗用車とトラック・バス)が増え、管理する部品点数が桁違いに増加したためです。

《1968年9月発行のパーツリストの例》
英語表記の上の部分にカタカナで振り仮名が記されています。

 

三菱ジープに限らず旧型車を所有される場合、キーとなるのがパーツリストと整備解説書の入手です。実は、このように古い車両でも、正確な部品番号さえ分かれば、三菱の部品販売会社から或いはモノタロウというサイトからでも超長期在庫となっていた新品部品が調達できることもあります。
これはやはり、今もなお自衛隊に納入されたジープ達が現役で活躍しているという事実も大きな要因だと思われます。
次回以降、三菱ジーパーが直面する部品供給の問題やその対処法等についても触れてみたいと思います。

《Old Timer VOL 172投稿原稿》 2020年4月26日発行

三菱ジープの部品について
《パート2 ラジエターホース》
 前回は部品番号のお話を致しました。多々ある部品の中から今回はラジエターホースについてご説明をしたいと思います。
1986年製のJ57-01799、これはガソリン車でG54Bという2600㏄エンジンが搭載された車両になります。別名、『最強のガソリン三菱ジープ』とも言われております。しかしながら、既に34年の年月が経過しております。
この車両のラジエターホースMB007912アッパーとMB007914ロアは、残念ながら今から4~5年前に三菱自動車工業からの新品部品供給が完全になくなってしまいました。ラジエターホース或いはラジエター本体から冷却水の滲みが発生すると継続車検は取得することができません。自分自身の車両にこのような事態が発生したため、なんとか部品メーカーに新作頂けないものかと数社と交渉を繰り返しました。しかしながら、どこの会社からも材質・製造時の温度等具体的な要求仕様書の提出を求められました。彼らとしては、このような事は自動車メーカーにしかできないことは百も承知の上です。つまり、もう古い車には乗らないで下さいというスタンスなのです。
残念ながら、非常にまじめな三菱自動車工業も同じでした。途方に暮れながらもラジエターホース現品から型を起こせないかと諦めずに悶々としておりましたら、問い合わせ先の1社であったTOYO KING商事株式会社のWANG社長から直々にお電話を頂き『私も三菱ジープJ10オーナーですから人肌脱いで協力しましょう』とのお言葉を頂戴しました。正直自分の耳を疑いました。2018年2月頃のお話です。(つづく)



《Old Timer VOL173投稿原稿》 2020年6月26日発行

《パート2 ラジエターホース》
 前回は、メーカーでもない一介の個人がラジエターホースを新作するという無謀な夢を持ち続けた私とTOYO KING商事株式会社WANG社長との運命的な出会いについてお話をしました。
その際、手元には部品供給が打ち切られる前に購入しておいた純正のラジエターホースアッパーMB007897はありましたが、ロアホースMB007898についてはどこからも入手する術がありませんでした。しかしながら、三菱ジープ互助会のメンバーに声掛けし総動員願った結果、何と中古のロアホースを寄贈して頂けることになったのです。これでラジエターホースアッパーとロアの部品の型製作に着手できる目途が立ちました。実は、部品製作において一番お金と時間がかかるのが型なのです。おそらく1型ウン十万は下りません。ところが三菱ジープJ10CのオーナーでもあるWANG社長から『型費は請求しません』との大英断を頂戴したのです。この決断を頂いたあとは死に物狂いで4G5系エンジン(4G52,4G53,G52B,G54B)のラジエターホースに関連するすべての周辺部品の部品番号や部品構造等を徹底的に調査・確認を行い、最終的に今回新作するラジエターホースは4G5系エンジン全てに互換性ありとのお墨付きを得ることができました。まさしく夢がかなったのです。
WANG社長の素晴らしいご配慮は、ラジエターホース部品の見積もりの際にもございました。私のような一介の個人には資金的な支援を要請できるようなところはどこにもありません。そのことをよくご存知のWANG社長から、発注単位を10本、50本、100本から選択できるようにして頂けました。実際の商品の発注・希望者への発送は、2018年4月からスタートし、既に2年が経過しました。その後クレームは1件も発生せず、2~3ヶ月に1回のペースでWANG社長に確定注文を出すことができております。なお、ディーゼルエンジン4DR50,4DR51用のラジエターホースの研究も平行して現在進めております。

今回の新作ラジエターホースは、上記車両全てに使用することが可能です。

 

《OLD TIMER VOL174投稿原稿》2020年8月26日発行

 三菱ジープの部品について
《パート3 番外編》MB064102 ワイド三菱ジープ用幌骨固定支点ボルト
 前回は、4G5系ガソリンエンジン用ラジエターホース(純正代替品)誕生の裏話を致しました。今回は、OLD TIMER読者プレゼントのコーナーにご提供した『特殊六角段付き支点ボルト』についてお話をしたいと思います。1977年1月版のパーツリストには“12番 ボルト”との記載があります。あっさりしていますね。実は、このボルトはただものではないのです。ネジ部分は10㎜となっており頭の部分は六角形で5㎜程の段が下部に設定されています。装着されている場所は、リア対面シートの裏側で、その部分にこのボルトを装着するナットが1個づつ埋め込まれています。このMB064102というボルトは、J50系ワイド三菱ジープにのみ標準設定されており、幌骨を点で支え固定する重要な役割を持っています。目立たない部品ですが、これがないと純正の幌を張ることができなくなります。そこで三菱ジープ互助会では、4G5系ガソリンエンジン用ラジエターホースに続いて、この純正同等品を新規に製作致しました。この部品もメーカーである三菱自動車工業が数年前に生産を打ち切っております。今回のMB064102相当品についても実は裏話があります。千葉県浦安市に本社があるネジ部品の加工を専門とするハイテク企業の社長様に直談判し、丸々新しく製作して頂くことができました。普通にメッキも含めて製作をお願いするとおそらく現状の2倍以上の価格になったと思います。部品の図面やデータ化部分で社長様に人肌脱いで頂き実現したMADE IN JAPAN部品です。次回は、現在検討中の4DR50,4DR51という三菱ジープディーゼルエンジン用のラジエターホース製作プロジェクトについてご説明をしたいと思います。


 

《OLD TIMER VOL175投稿原稿》2020年10月26日発行

三菱ジープディーゼルエンジン4DR5について
《パート1》知っているようで知らない4DR5エンジンの類別
 前回は、三菱ジープ互助会が新規作成した特殊六角段付き支点ボルトのお話を致しました。読者プレゼントにご提供しましたがどなたか手に入れられたでしょうか。さて今回からは、知っているようで実はあまり正確な情報がない三菱ジープの主力ディーゼルエンジン4DR5についてご説明をしたいと思います。三菱ジープ互助会では、新規開発を成し遂げた4G5系ガソリンエンジン用ラジエターホース(純正代替品)に続いて、4DR5ディーゼルエンジン用のラジエターホースの開発も予定しております。4DR5ディーゼルエンジン用アッパーホースについては既に三菱自動車からの供給が完全に終了しており、ロアホースの供給中止ももう時間の問題となっているのが現状です。
《4DR5エンジンの類別》
 三菱ジープへのディーゼルエンジンの供給は、ガソリンエンジンJH4をベースにこれをディーゼル化したKE31ディーゼルエンジンがそのルーツとなっています。皆さんはこの名前はあまり耳にしたことがないと思います。J3RD他ごく限られた車種に搭載されましたが、あまり多くの台数は生産されないまま生産を終了しています。その後、小型トラックキャンター用に新規開発されたのが4DR5ディーゼルエンジンで、三菱ジープには1970年頃からJ54という車種を中心に搭載が開始され、1985年前半頃までの実に15年弱愛用された名実ともに三菱自動車が誇る名機となりました。この4DR5ディーゼルエンジンには3種類の類別が存在し、民間向けに4DR50Aと4DR51A、自衛隊向けには4DR50Aエンジンの出力を若干落とした4DR50ADというディーゼルエンジンが設定されました。民間向けの4DR50Aエンジンは1970年から1978年まで生産され、1979年以降は当時の騒音・排気ガス規制をクリアするため4DR51Aエンジンにバトンタッチされました。私たちの調べた範囲では、部品番号は異なっていますが、どのエンジンにも同じ種類のラジエターホースが設定されていたようです。ここに4DR5エンジン用ラジエターホース新規開発の狙いがあります。

《エンジンプレート画像》
4DR50AD 自衛隊向け



4DR50A 民間向け



4DR51A 民間向け


《OLD TIMER VOL176投稿原稿》2020年12月26日発行

情報が圧倒的に少ない三菱ガソリンエンジンKE47について

《パート2》知っているようで全く知られていないKE47エンジン
 前回は、三菱ジープの主力4DR5系ディーゼルエンジンについてお話をしました。今回は皆さんが殆どご存じのない、僅か2年という短命で終わった三菱ジープエンジンについてご説明したいと思います。そのエンジンとはKE47という名称で、小型トラックキャンターや小型バスローザに搭載されていた公害対策が大幅に強化されたガソリンエンジンです。このKE47ガソリンエンジンが搭載された三菱ジープの車種は、J52,J22,J22H,J42,J34の5車種のみでした。三菱ジープに詳しい方でもこのKE47エンジンについてご存じの方は少ないと思います。

《KE47とはどのようなエンジンなのか》
三菱ジープが1953年に発売されてから1972年までの約20年間、ガソリンジープの主力は以前ご紹介したJH4という、米国生まれのCJ3Bに搭載された排気量2199ccのハリケーンエンジンを改良した日本独自設計のものでした。このKE47エンジンが投入されたのは1973年で、日本が高度経済成長期に入り高速走行機会の増大や排ガス・騒音規制の強化という近代社会からの厳しい各種要請が高まった時期になります。排気量はJH4が2199cc (最高出力76PS、最高速95km/h)であったのに対してKE47は2315cc(最高出力95ps、最高速115km/h)。つまりKE47はJH4に比べて圧倒的にパワフルでありかつクリーンなガソリンエンジンであったのです。J52を例にとると、ベース車両重量が1トン前後のJ3Rに、小型トラック・バス用の高出力エンジンがそのまま搭載されたもので、当時としては競合メーカーと比較しても非常に画期的なエンジンであったようです。しかしながら、投入時に既に昭和48年度(1973年)排ガス規制が年度内に実施されることがほぼ確定していたため、点火時期制御装置は装着されていましたが、結果的に僅か2年余りで市場から姿を消すことになったという経緯があります。この後、主力ガソリンエンジンは乗用車用に新規開発された4G5系へと切り代わっていきます。

《KE47-11エンジン画像》


《KE47エンジン英文整備解説書》


KE47に関するパーツリストや整備解説書類は、今や日本国内では殆ど見つけることができなくなっています。

 

《OLD TIMER VOL177投稿原稿》2021年2月26日発行

 たまには1950年代の三菱ジープの車両銘版を見てみましょう

《パート3》知っているようで知らない三菱ジープの車両銘版
 前回は、三菱ジープのガソリンエンジンKE47についてご説明を致しました。今回は少し趣向を変えて、皆さんに馴染みの少ない車両銘版について見ておきたいと思います。車両銘版は現代の車にも装着されており、その車両の製造年や搭載エンジンの種類等を示す車の出生届のようなものです。

《馴染みの少ない1950年代の三菱ジープ車両銘版》
三菱ジープが1953年に発売され、1955年1月1日からは車台番号の先頭2文字で西暦年による製造年が表示される仕様に変更されました。今ではなかなか見ることができない車両銘版をご覧ください。

《CJ3B-J3A》車台番号にMやJが末尾に打刻されているもの


上の画像の車両銘版には、車台番号の末尾に○の中にMが刻まれています。また生産者名にReorganizedという文字が含まれていますので、新三菱重工業株式會社製の車両ということになります。車台番号の頭にある『58』は昭和33年(1958年)に製造された車両であることを示しています。その頃は全て新三菱重工業株式會社製の部品で組み立てられた車両と、米国のウイルス社から部品供給を受けて組み立てていた車両が混在していたため、〇の中のMやJがそれらを識別するためのマークであったようです。更にもう少し解説すると、そのフレームが新三菱重工業株式會社で生産されたものであり、ウイルス社から輸入されたフレームではないことを示しています。この○の中のM又はJの打刻は1958年頃までの車両にはありますが1959年以降の車両には打刻されていません。その理由は、この時点で完全国産化が実現しもう識別が不要となったためです。

《CJ3B-J3》


《CJ3B-JC3》

 

《OLD TIMER VOL178投稿記事》2021年4月26日発行

今回はパーツリストから幻の部品についてご説明してみましょう

《パート4》
 前回は、三菱ジープの車両銘版についてご説明を致しました。実際に車両の不調部位を特定して修理を行う、気になる部品が完全劣化する前に交換しておきたいとなるとパーツリストの出番になります。三菱ジープの場合、1953年頃の発売であり、なかなか当時のパーツリストを入手することは困難です。三菱ジーパーの試練はここからスタートします。まあそのような仲間達を三菱ジーパーの互助精神で救援しようというのが三菱ジープ互助会設立の趣旨であります。
 さてさてそのパーツリストですが、自衛隊向けを除きエンジン編とシャシー編に分かれています。私が所有する最古のパーツリスト(除く英語版)シャシー編は1968年4月版で、以下のような構成になっています。実は、ごく初期の車両であるガソリン車J3、J3Rやディーゼル車J3RD,JC3では、その車台番号のある号機から部品番号が変更されているものがあります。何故変更されたのかは正直正確に調べる術はありません。今回はデフピニオンシャフトオイルシール(通称デフミットシール)についてサンプルとして見ておきたいと思います。
このオイルシールは、フロントデフとリアデフで共通部品となっています。
この部品はシャシーパーツリスト側に含まれます。 
《リアデフピニオンシャフトシール部品図》JM07644又はA306286又はMA306286
 


上記部品図の21番の部品です。この部品は、現在では殆ど入手することはできません。既に幻の部品になりました。実際の現品画像は別添のようになっています。私もつい昨年末に、ようやく本物の部品画像を入手することができました。正確な部品番号と部品に添付されているメーカーの部品番号シールによってようやく本物と特定されました
《リアデフピニオンシャフト部品番号》JM07644又はA306286又はMA306286
 
《実際の部品画像とメーカーの部品番号シール》
ピニオンシャフト側 

 

プロペラシャフト側

 

メーカー部品番号シール



ここまで調べて初めてこの部品が純正品で信頼できるものであると判断することができます。まるで探偵のようですが、これが旧型車なかでもごく初期の時代の三菱ジープを所有する方々に課せられたとても大切な任務であり、そして楽しい作業なのです。
幻の部品は、自分たちで製作するか或いは海外からそれに近いものを探して輸入するかしかありません。私たち三菱ジープ互助会では、このような一連の作業を通じて、非常に地道ではありますが常に互助精神を持って情報提供活動を続けています。これまでに製品化したもの等ご興味のある方は、是非以下から三菱ジープ互助会ホームページをご覧ください。
三菱ジープ互助会ホームページ:https://japan-jeep-center.com
 三菱ジープ互助会代表発起人J57改@日野市のブログ
:https://blog.goo.ne.jp/jeep-gojyokai

《OLD TIMER VOL179投稿記事》2021年6月26日発行

今回はパーツリストからでも判断に迷う事例をご説明してみましょう

《パート5》
 前回は、三菱ジープの幻の部品J3他用のリアデフピニオンシャフトオイルシールMA306286についてご説明を致しました。この幻の部品の代替品はUSPS航空便で米国から日本に向けて現在輸送中です。到着しましたら続報としてあらためてご説明することと致します。
 さて、今回はメーカーの方でも正確にはご存じのない三菱ジープ4DR5系ディーゼルエンジン用のラジエターホースについてご説明を致します。一口に4DR5系用ラジエターホースと言っても、私達が把握している限りでも3種類のものが存在します。
 ・自衛隊向け 4DR50ADエンジン用 アッパーホースMA316985、ロアMA316959
 ・民間向け 4DR50Aエンジン用  アッパーホースMA316953、ロアMA316954
        4DR51Aエンジン用  アッパーホースMB007912、ロアMB007914 
自衛隊向け4DR50ADエンジン用は、後でご説明する4DR50Aエンジン用と外見はほぼ同じなのですが、自衛隊向けホースの内径が4DR50Aエンジン用よりもインレット側で2ミリ、ラジエター側で1ミリ細くなっています。一方で材質は自衛隊向けの方が倍程度肉厚なものとなっています。何故、このような差別化を行う必要があったのかは不明です。そして民間向けは、同じ4DR50Aエンジンでもサーモスタットの仕様変更等が実施され、ウオーターアウトレットパイプの形状が見直されたことで2種類のラジエターホースが設定されています。文字で表現するとややこしいですが、このように一覧表にすると理解しやすいと思います。これまた毎度編集者の方の頭を悩ませる資料で申し訳ありません。疑問点は、以下まで直接お問い合わせ下さい。

 


 三菱ジープ互助会ホームページ:https://japan-jeep-center.com
 三菱ジープ互助会代表発起人J57改@日野市のブログ
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《OLD TIMER VOL180投稿記事》2021年8月26日発行

今回もパーツリストからでも判断に迷う事例をご説明してみましょう

《パート6》
 前回は、三菱ディーゼルジープのラジエターホース新規作成のご説明を致しました。現時点、4DR5エンジンシリーズの最終型エンジンである4DR51Aエンジン用のラジエターホース生産用の型の完成を待っているところです。
 さて、今回はメーカーの方でも正確には説明できない三菱ジープのブレーキ、ホイールシリンダーについて解説を致します。三菱ジープは、1977年1月のマイナーチェンジで全ての部品がインチ単位からミリ単位に見直されたと言われていますが、実はホイールシリンダーは今でもインチ仕様となっています。車種によってその部品番号は沢山ありますが、ホイールシリンダーのシリンダー寸法の種類はそんなには多くなく、1970年以降では以下の4種類です。1インチは25.4ミリなので、小数点4桁で切り上げるとこのようになります。
① 1インチ(=25.4000ミリ)⇒主にJ20系、J50系のリア
② 1 1/16インチ(26.9875ミリ)⇒主にJ20系、J50系のフロント
③ 1 1/8インチ(28.5750ミリ)⇒主にJ30系、J40系のフロント
④ 15/16インチ(23.8125ミリ)⇒主にJ30系、J40系のリア

三菱ジープのご先祖であるCJ3B-J3は、フロントもリアも両側にピストンが押し出されるタイプで全て1インチ仕様でした。J20系、J30系が新規開発された頃も全てJ3R系と同じく1インチでしたが、その後フロントとリアで①~④を組み合わせたものへと変更されたようです。

この中で④の15/16インチのホイールシリンダーは、残念ながら調達手段がなくなってしまいました。J30系とJ40系のリアホイールシリンダーはもう交換することができなくなってしまっております。残された手段は現品のオーバーホール修理のみです。

《画像④:15/16インチホイールシリンダー》


その一方で、②と③は仕様が②の1 1/16インチに統一され現在でも新品部品が調達可能です。①についても、かろうじて社外品も含め調達は可能です。

《画像③:1 1/8インチホイールシリンダー》



《画像①:1インチホイールシリンダー》


しかしながら①、②、③はいつ生産終了になってもおかしくない状況です。
このような心もとない部品供給状況を睨んで、①と②については、海外からの同等品を輸入すべく、既に神戸の老舗4WDショップ様とタイアップし対応準備を進めております。少しご安心ください。
各種疑問点は、以下まで直接お問い合わせ下さい。
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 三菱ジープ互助会代表発起人J57改@日野市のブログ
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2019年04月10日